コンコンコン。発熱も無く、咳だけが長く続いている方はみえませんか?
3週間以上も長引く咳は遷延性咳嗽、8週間以上も長引く咳は慢性咳嗽と言って、特に要注意です。その原因は様々ですが、気道のウィルス感染後に起きる感染後咳嗽、蓄膿症と関係する副鼻腔気管支症候群、タバコ等を原因とする慢性気管支炎、そして、胃液が食道に逆流する胃食道逆流症、そして、肺癌や肺結核と言うこともあります。こんな時はまず、かかりつけ医に胸部レントゲンを撮って頂き、肺野に異常影がないことを確認するが大切です。
このような遷延性咳嗽の患者さんの約4割に、“咳喘息”の方がみえるのです。咳喘息は、喘息といってもヒューヒューゼーゼーなどの喘鳴や呼吸困難は伴わず、呼吸機能や胸部レントゲンも正常です。気道が過敏状態になっているために、咳のみが出ているのです。しかし、本当に怖いのは、この咳喘息を放置しておくと、やがて本当の喘息になってしまう可能性があることです。適切な治療を受ければ、喘息に移行せずに早く良くなります。皆さんは、喘息は子供の病気と思っていませんか?まさか、自分は喘息にならないと思っていませんか。実は、咳喘息がきっかけで、本当の喘息になってしまう高齢者の方もよくあるのです。また、花粉症の時期には、喘息の悪化がよく見られますが、自分は花粉症だけなのに、妙に咳が出る方は、もしかしたら喘息があるかもしれません。不安がある方は、当院を含めた呼吸器・アレルギー科専門医に、是非一度ご相談ください。
あなたは、COPD(シーオーピーディー)という病名は知っていますか?Chronic Obstructive Pulmonary Disease(日本語では慢性閉塞性肺疾患)の略語で、難しい名前なので、さぞかしめずらしい病気なのかと言うと、そうではありません。今や、全世界では心筋梗塞や脳卒中などに次ぎ、第4位に死亡者数が多い病気です。今後ますます増え、2020年には全世界の死因の3位になると予想されています。2003年に行われたCOPDに関する疫学調査(NICE スタディ)では、日本には約550万人のCOPD患者が居ると(有病率8.6%)と試算されました。つまり、岐阜県総人口209万人に当てはめると、実に12万人も居ることになります。では、こんなに多い病気は私たちの周りの何処に居るのでしょう?実はタバコを吸う人の多くが知らず知らずの内に、この病気になっているのです。日本ではCOPDの言葉自体の認知度が低く、罹患していても軽視して受診しなかったり、喘息などの他疾患の治療がされ、見過ごされていることが多いのです。COPD発症原因のほとんどがタバコの有毒ガスです。COPDは、ある日突然起きるのではなく、タバコの有毒ガスが肺組織を破壊して行く過程でじわじわと確実に進行し、肺機能検査で1秒間に呼出できる息の量(1秒量)が正常値の7割を切った時点で、COPD発症(疑い)が成立します。患者年齢で見ると、65歳以上で急激にCOPD患者が増えてきます。はじめは全く無症状ですが、もし階段を上ったりした際に息切れを感じ始めたら、要注意です。最後に酸素ボンベが必要なまでに悪化してしまうことがあります。
『COPDは片道切符』であり、壊れた肺は二度と戻りません。喫煙はひたすら、肺組織破壊によるCOPD進行を突き進んでいることになります。そして自分自身が喫煙していなくても、他人の喫煙による副流煙でも起き得ます。COPDの治療は、肺が壊れる原因をストップするため、まず第1に完全禁煙を行うことから入っていきます。
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